おばけをみたことがあるわけではない。
けれど、不思議な現象には何度か遭遇した。
- コップ
まだ子どもたちもいない頃。
ある夜、暗くした居間で夫と映画を観ながらのんびりしていた。
中盤から飲み始めた飲み物は集中していたからか全部は飲まなかったな、と思い、映画が終わったのでそばに置いておいたコップを片付けようとしたところ、見当たらない。
ふと顔を上げたところ、数メートル先の食卓のあかりの下にそのコップはあった。夫のコップは手元にある。
私のコップだけが、映画を観ている間に私のそばから食卓の上への移動していた。中身の入ったまま。映画の中盤以降は二人とも椅子の上から動いていない。
私 – 夫 — 食卓 という位置関係だったので、仮に私がぼんやりコップを置きに行って忘れているのだとしても、夫は私が動いたことを確実に覚えている筈だが、その事実もない。また、私が中身の入ったコップをわざわざ居間の暗いうちに映画の途中で食卓まで移動させる意味もない。ただ、椅子の足元に置いたので、蹴らないようにするのと、忘れずに片付けないとな…と鑑賞中にすこし思ったのだ。
だからなにか気を利かせてくれた座敷童的なものがいたのだと思うことにした。 - 爪痕
知らぬ間に夫の背中に謎の爪痕があったことがある。
人のものではないのだ。小さく等間隔に3本ほど、赤い糸のような傷跡になるほど鋭い何かが、寝ている彼を起こさずに傷つけていった。
彼の身体の硬さでは届かない場所である。
また、服はなんともなっていないので(というかもちろん)チィさんではない。
布団、服、何かの道具などにも、5mmほどの間隔で3〜4本の傷を幾つもつけられるようなものは特に見付けられなかった。
私たち、座敷童的なものを何か怒らせてしまったのだろうか。
最近は音沙汰がない(子どもたちに気圧されているのか)。 - プール
これは小さな頃、札幌の大きなプール施設に付属するお風呂であったこと。
大きなプール施設なのでお風呂も大きい。私はその時父親と男湯に入っていて、露天風呂(にも温水プールのような部分がある)で潜って遊んでいたら数人の子どもたちが楽しそうに数を数える音が聞こえてきた。
水から顔を上げると、聞こえない。
沈めると、「…にーい、さーん…」「ふふふっ」「次は〇〇の番だよ」「いーち…」と聞こえる。
近くに露天風呂やサウナが幾つかあったが、その中にも該当するような子どもたちはいない。
そもそもプールの中に聞こえるように音を流す場合はかなり大音量でなくてはならないはずだけれど、まるでスピーカーから流したかのようにはっきりと・水中でだけ話し声が聞こえるというのが解せないことであった。
以上です。あと北海道に住んでいるころ、弟が家の中で遭遇した赤いワンピースのおばけがいるんですがその話はまた今度にします。