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長男がみるふしぎなもの

夫婦でホラー映画が好きなので、
これはB級すぎて面白かったけど怖くはなかったとかやいやい言いながら家でよく観ているし、夫は動画サイトで怪談を語る人の音声だけ流し聞くのが好きで普段からよく流れているし、生まれてすぐからそのような環境にあった子どもたちだけれど、3歳も後半になった長男は最近ようやく子どもらしく怖がるようになってきた。
もちろん無理強いはしていないけれど、怖いシーンというのはたいてい脅かすようなタイミングで入ってくるものだから、何気なくみていたときに衝撃を受けぴょんと飛び上がって「やだー!」といって背中をくっつけてくるのがかわいい(しかもその後も観続けるのでかわいい)。

稲川淳二の語り風のですます調で自作の怪談を話し始めたこともあった。曰く、

「おばけがね、出てきて、ペッッてするんですよ。」

はいそんなに怖くないですね。なにをペッッてしたんでしょうね…。ちょっと作品集を記録しておきます。

2016/2月
「おばけのおかーさん『オハヨー!』『ハーイ!』ってって、おばけのそうじきかける」
「おばけのおかーさん くるまでシューっていく」
「ちいさなひこうきのおばけがピカピカピカー!としながらとぶ」
「おばけたまごたべる バクバクバクー(手をパクパクしながら)!って おばけクビぐるぐるぐるーってのびる」

「ひげのおばけ、ぴゅー てはしって、かっこいー」
(「ひげのおばけ」のところで鼻の下に両手の人差し指を添え、「ぴゅーてはしって」のところで掌を上にした両手をお尻の上辺りに伸ばす)

2016/4月
「けむりのおばけ バクバクーッ まどのところにおばけ バンッ って」(はさみうち)
「おばけ しゅーーーー…ってまわる(首を左回転させるしぐさ) そしてピュッ!!っていっちゃった」
(その他、怪談の中に「まっっくろになってしまって」という言葉がよく出てくる )
(自分がおばけになる、という話もあった)

日本語、擬音語擬態語や物語構成の練習にとてもいいなと思うので、これからもいろんなかわいい怪談を聞かせてほしいなーと思いながら記録をとっていたのだけど、最近すこし洒落にならないことが増えてきてしまった(いや彼は元からふざけているわけではないのだけど)。
というのも、大人の私達に見えない何かがすこし見えているようなのだ。

hiihall

あるとき、夫とふたりでいた息子は突然、心配するようにビルの外壁を指差して「しろくまのひとなにしてるのあそこですわって あびない(危ない)よ!おちちゃう!」と言ったそうだ。彼は白色のことを”しろくま”と言う。そして指差した先には、どんなに目を凝らしても、人影はおろか小鳥などの生き物の影などなかったという。足がかりのない、高層階の、壁であった。

またあるとき、夜に車で走っているときに街路樹の上を指して「すわってる」というので「なにが?」と訊いたら
「 “ちがうひと” 」
と言ったのにもぞっとした。

このあたり(2016年6月)までは本人はそんなに怖がってもいなかったのだが、ほんとうに不思議そうではあったので、作り話ではないなというのはこれまでとの違いからわかった。

最近はようやく涼しくなったが暗くなるのも早くなった。
先日皆でお出かけした帰り、車から降りて駐車場を行こうとしていたらふと振り返った長男が息を呑んで私の背後、遠くを見つめた後 獣の四つん這い走りのような仕草をしてみせて「こーうやってはしってる、くろいひと…!なに??」と言った。彼はすこし怯えていた。ねこなどの動物ではなく、大きいらしい。そして彼が見ていたほうは行き止まりで、駐車場にもそこから見える窓にも人影はなかった。「ごりら?」と訊いてきたのでちょっと脱力したが、それだけ大きく勢いがあって怖かったのだろう、後日日中に通りがかった時にも数度私達に「くろいひとこない?」と確認していた。

そしてその方向というのが、数ヶ月前に これも夫とふたりで外出しようと歩いていた子がハッと見上げて「どしてのぼってるのー?あのひとなにしてるー?」と訊いてきた方向と一緒だった。その時は、”くらいの” が “まどのそとにすわってた”んだそうだ。もちろん、人影は見当たらない。

我が家の車を停めている駐車場にはなにか、くろっぽい色の大きなものが不可思議な動きをしているらしい。

そして本日(10月23日)のこと。
私は次男を寝かしつけるために寝室にいた。
長男は最近眠たくなったら素直に寝室へ来る(そしてその時間はそんなに遅くない)ので無理強いはせずに居間でのんびりさせていた。
テレビでフィギュアスケートの中継が始まっていて、すこし興味を持ったようなので「くるくるまわってるね」「うん」「きれいだね」等会話をしてから照明を小さめにしてきたので、そのままテレビを眺めていたようだったが、いきなり
「ままゆびだすのやめて!」
と小声ながら私を避難するような、やや怯えた声を投げかけてきた。よほどのことがなければ寝かしつけを邪魔しては来ない子なので何事かと居間へ出てみると、テレビのほうを気にしながら「ゆびだすのやめてよ」と繰り返す。
照明を明るくする。

どこから指が出たの?ままはしてないよ?というと、テレビを指差す。

ここ?とテレビの画面を指し示してみると、否定する。
まさか と思い、ここ?とテレビの上枠を指差すと、肯定をする。

つまり人など入る隙間のないテレビの裏からテレビを掴むように指だけ出てきたということらしい。

ちょっと考えてしまった。
おばけなどをみるという件について、よく子どもは想像力豊かだから(見間違いの解釈が強烈だとか妄想と現実の区別がつきにくいとかいう意味)、というが、どうもそれゆえではないふうだ。
いずれにしてもこれから先、あまり怖すぎる目に合わないといいのだが…と思った。
あとは大人があまり面白がったり否定したりすると傷つくだろうから、追求しすぎないようにしている。
「なんでもないよ」「だいじょうぶだよ」と声を掛けるうちに、そのうちに見なくなるんだろうか。
それとも…。

 

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怖い話

おばけをみたことがあるわけではない。
けれど、不思議な現象には何度か遭遇した。

  • コップ
    まだ子どもたちもいない頃。
    ある夜、暗くした居間で夫と映画を観ながらのんびりしていた。
    中盤から飲み始めた飲み物は集中していたからか全部は飲まなかったな、と思い、映画が終わったのでそばに置いておいたコップを片付けようとしたところ、見当たらない。
    ふと顔を上げたところ、数メートル先の食卓のあかりの下にそのコップはあった。夫のコップは手元にある。
    私のコップだけが、映画を観ている間に私のそばから食卓の上への移動していた。中身の入ったまま。映画の中盤以降は二人とも椅子の上から動いていない。
    私 – 夫 — 食卓  という位置関係だったので、仮に私がぼんやりコップを置きに行って忘れているのだとしても、夫は私が動いたことを確実に覚えている筈だが、その事実もない。また、私が中身の入ったコップをわざわざ居間の暗いうちに映画の途中で食卓まで移動させる意味もない。ただ、椅子の足元に置いたので、蹴らないようにするのと、忘れずに片付けないとな…と鑑賞中にすこし思ったのだ。
    だからなにか気を利かせてくれた座敷童的なものがいたのだと思うことにした。
  • 爪痕
    知らぬ間に夫の背中に謎の爪痕があったことがある。
    人のものではないのだ。小さく等間隔に3本ほど、赤い糸のような傷跡になるほど鋭い何かが、寝ている彼を起こさずに傷つけていった。
    彼の身体の硬さでは届かない場所である。
    また、服はなんともなっていないので(というかもちろん)チィさんではない。
    布団、服、何かの道具などにも、5mmほどの間隔で3〜4本の傷を幾つもつけられるようなものは特に見付けられなかった。
    私たち、座敷童的なものを何か怒らせてしまったのだろうか。
    最近は音沙汰がない(子どもたちに気圧されているのか)。
  • プール
    これは小さな頃、札幌の大きなプール施設に付属するお風呂であったこと。
    大きなプール施設なのでお風呂も大きい。私はその時父親と男湯に入っていて、露天風呂(にも温水プールのような部分がある)で潜って遊んでいたら数人の子どもたちが楽しそうに数を数える音が聞こえてきた。
    水から顔を上げると、聞こえない。
    沈めると、「…にーい、さーん…」「ふふふっ」「次は〇〇の番だよ」「いーち…」と聞こえる。
    近くに露天風呂やサウナが幾つかあったが、その中にも該当するような子どもたちはいない。
    そもそもプールの中に聞こえるように音を流す場合はかなり大音量でなくてはならないはずだけれど、まるでスピーカーから流したかのようにはっきりと・水中でだけ話し声が聞こえるというのが解せないことであった。

以上です。あと北海道に住んでいるころ、弟が家の中で遭遇した赤いワンピースのおばけがいるんですがその話はまた今度にします。