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『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』と天女の羽衣

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』はアイルランドのアニメ映画で日本では今日から公開されている。

お話の題材は主にアイルランドの神話、あざらしの妖精セルキー。
多くを言葉で語らないので、
自分が登場人物の子どもになったような手探りの気持ちでみることができる。
だからここでも筋については詳しく述べないけれど、
セルキーについて調べてみたら
“海ではあざらしの姿、陸に上がるときは皮を脱いで人間の姿になる”とのことで、
陸で皮を隠されてしまうと人間のいいなりになるしかなくなってしまい、
でも皮を見付け次第海へ帰る…とあり、
まるきり天女の羽衣伝説と同じで驚いた。
小さな頃は天女の話を、勝手な旦那さんだ、天女が可哀相、と思っていたのだけれど、
各国に似た話があるとするならば、もしかすると
医療の発達していない昔に病気などで弱って死んでしまった奥さんのことを
“海へ帰ってしまった””天へ帰ってしまった”妖精や天女だったんだよ、と子どもに説明していたのが発端だったりするのかも知れない、
そうだとしたら悲しいことだな、と思った。

繰り返し歌われる歌も、色彩もかたちや動きも、とても綺麗な作品。
そしてあっここはゆばあば、ここはねこバス、ここはラピュタ、というとてもわかりやすいところもあってなごんだ。
(きっともっとほかの構成要素たる作品もあるのだろうけれど、知識不足。)
あと最後のよくみると重力が逆さまになっている描写がほんとうに美しく、さりげないけれど決定的で、悲しくて泣いてしまった。

日本語吹き替え版も気になるのでDVDが出たら手に入れたいし、
今作の監督トム・ムーアによる、初の長編アニメーション『ブレンダンとケルズの秘密』もみたいと思った。
とにかくまずは皆さん今作を劇場でみましょう。