”ますむらひろし”という80年代から活躍している漫画家さんがいる。
“ヨネザアド”という架空の大陸の、”アタゴオル”という架空の街を舞台にした作品を主に
描いてきた作家さんで、二足歩行の喋る猫が出てくる。
というかこの世界では人間は少数派で、そしてヨネザアドには猫の目時計があり、
セミの天ぷらがあり、毛だらけの飛行機がある。
ちょっと変わった世界なのだ、すべてが繋がっている童話のようで小さな頃から私にはとても居心地が良かった。
私は
『アタゴオル物語』
『夢のスケッチ』
『アンダルシア姫』
『コスモス楽園記』
『アタゴオル玉手箱』
『ペンギン草紙』
などを繰り返し読んだ。宮沢賢治原作の
『雪渡り十力の金剛石』
『銀河鉄道の夜』
も読んだがアタゴオルシリーズのほうが好きだった。
それら全ては父が趣味で買い揃えて書庫に置いてあったものだった。
子ども時代を過ごす自宅の本棚はけっこうその後の人生に影響を与えると思う。
子どもはわりとてきとうに選ぶけれど、気に入ったものは繰り返し読むので、
揃えてある幅は広いか親がぜひ読んでほしいとか大好きというものにしておきたいといま思う。
私の実家は絵本がかなりの量あったが これを子に…という感じではあまりなく、
親が気に入ったものをどんどん買っていくうちにそうなったらしい。
それらの絵本と、手塚治虫や大島弓子やいがらしみきおの漫画、
村上春樹や赤瀬川原平の著書をジャケ読み(?)する中でお気に入りが増えていった。
で、我が家は美術書とホラー小説が大量だけどどうなるかしらん。
(ちなみに私が子どものころ読んで衝撃を受けたのは
大槻ケンヂ『くるぐる使い』と岩明均『寄生獣』…)
話は戻って今年、『ヨネザアド幻想』という本を買った。
自分で買った初めてのますむらさんの新刊である。
といってもこれまでの作品の中から、彼の
故郷、米沢を色濃く反映させて創った作品や米沢を舞台にした作品群を一同に会した作品集
(ヨネザアド・カタツムリ社HP 『ヨネザアド幻想について』より)
とのことだけれども、読んだことのない初期作品が沢山収められていた。
ますむらさんのWikipediaにもどなたかが書いていたが、
初期作品に出てくる猫は人間の愚かさを指摘し罰を与えるような、
ほぼ化け猫のような恐ろしい描かれ方をしている。
そこから徐々に人と猫が対等になっていったのだなということがよくわかった。
(まずはじめに「人間だけが優れているという描き方をしたくない」という考えがあったのだそうだ。)
大きな大きな本で、加筆も沢山されているとのことで、見応え充分の一冊。
アタゴオルシリーズは私も揃えて子どもたちに読ませたいなあ!とあらためて思った。
ちなみにご本人から、Twitterで『霧にむせぶ夜』はちょっぴり怖いのでお子さんは注意!とのリプライを頂きましたが私が見てもヒッてなるコマがあった。コマというかページ。
随分前に猫町のギャラリーで偶然お見かけした時、ヒデヨシみたい!と思ったのは秘密。
あといつまでも私の憧れは聡明で行動力のあるツキミ姫です。